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他方、こんな例もある。
JR東日本の夜の通勤特急(たとえば新宿上局崎間の「新特急」)には、特急券を買わずに乗車する人が多い。
しかし車掌の数はきびしく削減されていて、検札の労は大きく、すべての乗客に特急券を買わせることは不可能に近い。
そこでJR東日本の労働組合は、組合の立場からする一種の業務研究会の場で当の車掌たちにその状況をつぶさに報告させて車掌増員要求の正当性を根拠づける一方で、ある車掌区でみられた特急券販売実績の個人別グラフの掲示などをやめさせている(以上いくつかの例は95〜96年のききとりによる)。
こうした活動の意義は大きい。
能力主義管理の現時点で広がりつつある個人別ノルマ設定の妥当性、その達成を競わせるインパクトの程度、そしてその達成と稼得賃金の関係などは当然、その場で働く者たちが規制すべきテーマであるといえよう。
なかま関係の帰趨にかかわるという意味では、賃金支払い基準の明確化、賃金体系の透明化という課題もある。
私たちの国で個人の賃金が「プライバシー」に属することとみなされるのは、総じて賃金体系が複雑であるばかりか、総合評価的な人事考課による部分がかならずあって、そこを同僚に知られたくないからだ。
しかし10年ほど前にはなお、民間企業から当時はまだほとんど査定の影響のなかった公共企業体に移った労働者が、そこでは同僚たちがみんなの前で給料袋を破ってマージャンの借金などを返したりするのをみて、「これが本当」と感動したという。
そう、これが本当である。
アメリカの自動車労働者は、査定要素のない同一労働同一賃金を「連帯賃金構造」とよんで、日本的経営の下でもこれを護持している。
査定のない賃金システムを獲得することは日本の労働者にはもうむつかしいかもしれない。
だが、少なくとも賃金明細書を見せあって、私か35万円、あなたが38万円なのはなぜかを納得しあうことができる、そんな賃金体系にすることはまだできよう。
もちろんそのためには、能力や業績や仕事のしんどさを評価する基準を客観的にすることが求められる。
それは労働組合の伝統的にして最小限の守備範囲に属している。
配置の平等なかまの連帯の再構築は、いっさいの能力主義管理をきっぱりと拒む徹底したノンエリート主義のスタンスに立つとき、主張としてはもっともすっきりする。
けれども、日本の労働者に特徴的な発想のうえに立ってヽこばみきれぬ能力主義管理とのつきあいのなかになかまの連帯を内在させる方途もないわけではない。
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